国民経済計算という、国連が加盟国の経済状況を比較できるようにするための基準があるのですが、その構成要素の1つに国民所得勘定というのがあります。

国民所得勘定というのは、その国の経済全体を『生産』、『分配』、『支出』という観点から記録するもので、その国民所得勘定における重要指標が、今回のテーマである『GDP(国内総生産)』です。GDPについては、経済学においての超重要論点で、必ず知っておく必要があるので、しっかり学習していきましょう。

GDPとは?

GDPはGross Domestic Productの略で、日本語に訳すと『国内総生産』という意味になります。ニュースや書籍などでも、GDP・国内総生産の両方ともよく出てくる言葉なので、一度は目にしたことがあると思います。それぐらい

総務省が公開している資料に、GDPについて簡潔に表現しているものがありましたが、このように記載されています。

GDPとは、国内で生産された「付加価値」の合計を表すものである。

令和元年 情報通信白書 第2章 第2節

つまり、GDPというのは、国内で1年間に新たに生み出された生産物やサービスなどの付加価値の金額を総計したものを言います。ポイントは『新たに生み出された』という点で、土地や株式を売買した代金などはお金は動いていますが、新たな価値を創出していないので、GDPの計算には含まれません。

GDPの大きさを見ることで、どれぐらい経済が動いているのか経済規模が分かり、またGDPが昨年度と比較してどれぐらい伸びているのかで経済成長率を測ることができます。

付加価値とは?

上記の内容と重複しますが、付加価値というのは、事業者(企業や個人事業主)が生産活動の中で新たに生み出した価値のことを言います。

例えば、あるラーメン屋さんが800円/杯で販売しているとします。ラーメンを作るためには、製麺所から麺を調達してくる必要があります。計算をわかりやすくするために、製麺所がラーメン屋に麺を500円で提供しているとします。さらに製麺所が製麺するためには、農家から小麦を調達してくる必要があり、300円で調達しているとします。

本当はもっとたくさんの取引があるので、とても複雑になるのですが、シンプルにして考えると、この取引の場合のGDPは、以下の合計である800円になります。

  • 農家の生み出した付加価値:300円
  • 製麺所が生み出した付加価値:200円
  • ラーメン屋が生み出した付加価値:300円

GDPというのは『新たに生み出された』価値を計算対象とする、と先ほども書きましたが、それは各取引においても同じように考え、製麺所からすると500円の麺を生産しているわけですが、その内訳として300円分は農家が生産した小麦の価値が含まれています。

それを控除せずに計算してしまうと、最終生産物を生み出すまでの取引回数が増えれば増えるほどGDPが膨らむことになります。そうすると、純粋な付加価値が算出できなくなるので、中間投入額を控除して計算することになります。

そうすると、この一連の取引で生み出された付加価値はラーメン屋さんがお客さんに提供した最終生産物の価格(付加価値)である800円と等しくなります。

3つの視点から見たGDP

経済活動というのは、生産したものを販売(消費)し、それを給与などを通して分配し、分配されたお金を使って買い物をしたり企業が設備投資をしたりという循環をしながら動いていくものです。

この循環の中でのいくつかの観点からGDPというのを捉えることができます。

生産面から見たGDP

GDPを捉える1つ目の視点が生産面ですが、これは先ほど例にあげたラーメン屋さんの話で、製品やサービスの生産という観点からGDPの大きさを計算するというものです。

分配面から見たGDP

生産活動によって生み出された付加価値は、企業・家計・政府に分配されることになります。先ほどのラーメン屋さんの例でいうと、お客さんに販売して得たお金は従業員の給料として支給したり、税金として政府に納めたりして、残った分はラーメン屋さんに剰余という形でそれぞれ分配されることになります。

それを計算式として表したのが以下になります。

 GDP = 雇用者報酬 + 営業余剰・混合所得 + 固定資本減耗 + 間接税 - 補助金

この計算式自体が一次試験で出題されることもあるので、しっかり覚えておきましょう。

支出面から見たGDP

分配された付加価値(お金)は、企業であれば設備投資として使ったり、家計に分配されたものは買い物に使ったり支出に回ることになります。

支出面から見たGDPについても以下の計算式で表すことができ、試験対策上も覚えておいた方が良いでしょう。

 GDP = 民間・政府最終消費支出 + 国内総固定資本形成 + 在庫品増加 + 輸出 - 輸入

三面等価の原則

ここまで見てきたように、経済活動というのは『生産 → 分配 → 支出』という流れで捉えることができます。

この生産・分配・支出はいずれの側面から見ても等しくなることがわかっており、それを三面等価の原則と呼ぶので覚えておきましょう。

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